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2005-08-04

この蝉の声の響くどこかで今まさに君と僕は出会っている

何かの雑誌で麦わら帽子の少年が虫捕り網を持っているイラストを見て、なぜだか彼が手にしているのは槍だと思ってしまった。すぐに勘違いには気づいたけどその瞬間頭をよぎったイメージ。

夏休み/子供たちは網の代わりに槍を手に持つ/虫でも捕るように、簡単に、笑いながら/狩る/子供だけの国/永遠に続くたのしい夏休み……

小学生とおぼしき少年少女が心底無邪気に「かいぶつ」を血祭りにあげていくシーンが目に浮かんでちょっとニヤニヤ。

これはあれですね、恐らく、大人も学校も世界も大嫌いで夏休みは大好きな男の子が永遠の夏休みに迷い込んでしまう物語に違いない。八月三十一日、宿題なんて何一つ終わってなくて、明日からはまた代わり映えのしない退屈な日々が始まる。夏が終わらないでずっとずっと続けばいいのに、と彼は思う。そしてふとした拍子に別の世界へ足を踏み入れてしまう。そこは子供しかいない夏の国。青い空はどこまでも広がり、街は陽炎のようにゆらゆらと熱狂して、蝉の合唱が絶えることはもはやない。心躍る彼をさらに喜ばせるように、子供たちはこの世界の「お話」を語る。街の外には怪物がいて、そいつらはぼくたちの夏休みを終わらせようとしている。だからぼくたちは戦わないといけない。悪い怪物を殺さなくちゃいけないんだ。きみもわかってくれるよね?

もちろん彼は子供だから、はりきって悪者退治の冒険に参加する。怪物はなんだかよくわからない大きなもので、槍で突き刺すと変な声をあげて倒れる。化け物も赤い血を出すから面白いねと真っ赤な少年たちは笑う。彼はその感覚にはちょっとついていけなくて、同じように輪に入れないでいる女の子と仲良くなる。ずっとずっと続く最高の夏。

ある蒸し暑い夜、彼は一つの夢を見る。彼がその夢から目覚めたとき、夏休みは地獄となる。

ネバーランドに子供しかいないのはピーターパンが大人を殺しているからだそうですね。そんな感じ。たぶん第二次性徴が現れたらアウトなのです。夏を終わらせる怪物は退治されなければいけません。大人しくて健気なヒロインも血相変えて主人公を狩ろうとしてきます。ですが、彼女にも初潮が来て、彼らは手を取り合って逃げることになります。子供たちから。夏から。

彼らの足元でぽっかりと空ろな口を開けている夏。

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